離婚をする理由としていつの時代も上位に登場するのは不倫や浮気、そして両親との不仲などがあります。一度は結婚をして将来を約束した男女であっても、案外簡単な理由で離婚するのが今の日本の現状です。
下記の図は厚生労働省が行った司法統計による離婚の推移ですが、近年の日本では約3組に1組(25万組)の夫婦が離婚をするというデータがあり、離婚することは必ずしも珍しい事ではない時代になっていると言えます。
後述しますが、最も多い離婚理由は「性格の不一致」で、芸能人を始めとする8割近い夫婦がこの理由を挙げています。
そこで今回は、離婚に至った場合に請求できる慰謝料や、調停や裁判などで必要になる「離婚に必要な理由」をご紹介しますので、参考にしていただければと思います。
離婚するとき法律的には必要となる離婚理由5つ
離婚する理由には様々なものがありましたが、お互いが納得して離婚するのであれば、どんな理由であれ離婚することは可能です。しかし、相手が離婚に合意してくれない場合は離婚調停や離婚裁判を申立てて離婚する必要が出てきます。その際、離婚裁判では下記の5つの理由に該当しないと離婚は出来ないとされています。
- 不貞行為(浮気・不倫)
- 悪意の遺棄
- 3年以上の生死不明
- 配偶者が不治の精神病
- その他婚姻を継続し難い重大な事由
不貞行為(浮気・不倫)
不倫や浮気による離婚原因で、「夫婦の一方が、自由な意思に基づいて配偶者以外と性的な関係を持つもの」と定義されています。プラトニックな関係やキス程度では不貞行為とはみなされず、婚姻関係にある男女が他の異性と性行為に及んだ場合は不貞行為となります。(民法770条1項1号)
例)夫が妻以外の女性と浮気(不倫して)性的関係に及んだ場合
ただし、夫婦仲が破綻した後に不貞行為が開始した場合などは、裁判上の離婚が認められない可能性もあります。また、不貞行為で慰謝料などを請求したい場合は、不倫した証拠が必要になりますので証拠獲得のためにも弁護士に相談されることで、どのような証拠が裁判で有効なのか、判断する事ができます。
悪意の遺棄(民法770条1項2号)
婚姻における夫婦間の同居・協力・扶助の義務や婚姻分担費用義務に違反する行為とされています。「悪意」とは、義務を履行しないことで婚姻関係が破綻するかもしれないことを知って、かつこれを容認することをいいます。
例)
- 夫が妻を置き去りにし、長期間生活費を送金しなかった
- 家族との共同生活を放棄して自宅を出て行った場合
- 夫が他の女性のもとへ行き帰ってこなくなった場合 など
3年以上の生死不明(民法770条1項3号)
法定離婚原因のひとつで、配偶者が最後に生きていることを確認してから、音信不通で生きているのか死んでいるのか、生死いずれとも判明しがたい状態が3年以上、現在まで継続している場合です。携帯電話や手紙などによる返答がある場合など、単なる所在不明のときには該当しません。
3年以上の生死不明に該当するケース
- ・最後の音信、消息があった時から起算して3年経過していること
- ・生死不明であるという客観的な証拠があること
上記2点を満たしていれば、離婚の請求を認められることになります。
配偶者が不治の精神病にかかり回復の見込みがないこと(民法770条1項4号)
強度の精神病にかかり、回復の見込みがない場合や、病気の程度によって同居協力扶助義務に違反するほどの重症である場合など、夫婦間の協力義務を果たせないと判断された場合、離婚できる可能性があります。
※ただし、離婚を求める配偶者が誠意ある介護・看護を行っている。障害のある配偶者に対する離婚後の療養生活の保証ができる事情がないと離婚は難しいと言えます。
婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)
婚姻関係が深刻なレベルまで破綻し、婚姻生活の回復の見込みがない場合をいい、これを抽象的離婚原因(相対的離婚原因)といます。ランキングに登場した原因の多くはこの「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当しており、個別の事情で離婚が可能かどうかできるかが決まります。
婚姻を継続し難い重大な事由として、以下のことが離婚理由になるものとして認められています。
性格の不一致
性格の不一致を離婚の理由にする際、その判断基準は難しく、「円満な婚姻関係の改善に余地がある」と判断された場合、調停離婚(裁判離婚)では判決はなかなか得られないと思ったほうが良いでしょう。
暴力沙汰・暴言など
暴力沙汰や暴言なども程度の問題で、喧嘩のはずみ程度では離婚の理由としては認められない可能性が高いです。やった方とやられた方で、受け止め方は違ってきますが、体のアザが絶えない、鮮血沙汰、酒乱で子供にも手をあげるなどが繰り返されるようであれば離婚の理由として認められている例は多くあります。
セックスレスや異常性格
性行為の拒否などによるセックスレスや、性的異常(一概には言えませんが、ふとんの上で靴を履かせる、SM行為の強要、暴力を振るう)など、相手の意思に反して、継続して強要する場合には、婚姻を継続し難い重大な事由として認められています。異常性格も同様にDVやモラハラ、突然のわめきだすなどの幼児退行などは離婚の理由となりえます。
家族・親族との不仲
嫁・姑の対立など、夫婦間には特に離婚となる理由がなくとも、双方の親の対立や、配偶者の親族との不仲から離婚に至るケースもあります。
嫁と姑との関係がこじれたとしても、直接夫婦の問題とは言えず、性格の不一致と同様に、それだけでは離婚請求は認められません。ただし、妻が夫の両親との不和を改善しようと努力しないなどという場合には、夫に婚姻破綻の責任がありますので、それを理由に離婚の請求は可能です。
信仰・宗教上の対立
特定の宗教に対する信仰や宗教活動の自由は憲法で保障されており、信仰の違いだけでは離婚理由として認められませんが、宗教活動にめりこみ、勧誘の為に毎晩外出するなどで、仕事、家事、育児などを放棄して家庭崩壊を招くなど、限度を超えた宗教活動などは離婚理由として認めらます。
ギャンブルや浪費
健康な夫が働こうとせず、浪費をする、借金をする、ギャンブル癖があり収入をつぎ込むなどは扶養義務違反に当たり、悪意の遺棄の離婚事由に当てはまるとして離婚請求が可能です。浪費癖やギャンブルなどを離婚の理由として認めてもらうには、事実を証明できる証拠(レシート、銀行の通帳のコピー、日記など)を用意する必要はあります。
犯罪を犯して服役中
夫婦の一方が服役をしている場合でも、殺人などの重大犯罪でない限りはすぐに離婚する理由としては認められません。ただし、何度も懲役刑になっている、家族の生活に支障を与えるなどで、正常な婚姻生活が送れないと判断された場合は離婚理由として認められます。
離婚に到る原因が自分にあっても離婚は可能
例えば、浮気をした妻が夫に離婚の請求をする時など、婚姻関係を破綻させた原因が離婚を請求する側にある場合は、原則として離婚は認められませんが、下記の場合では離婚請求が認められる場合があります。
- 別居期間が長い
- 未成年の子どもがいない
- 離婚しても精神的・社会的・経済的に苛酷な状態とならない
- 離婚しても社会正義に反する特段の事情がない
- 夫婦の双方に破綻の原因がある
- 夫婦仲がすでに破綻している
以上の場合には、たとえ浮気や不倫などの離婚する原因が作ったのがあなたでも離婚請求は認められます。
離婚した方が良い6つケース
3組に1組が離婚する現在、遅かれ早かれ誰もが離婚する可能性を秘めていますが、離婚しようかなと考えた程度ではすぐに離婚しようなどとは考えないはずです。では、離婚を実行に移そうと思った理由や瞬間はなんだったのでしょうか?
相手に多額の借金があった時
パートナーに多額の借金があると判明したときは離婚を決意する方は多いようです。浮気だったら一度目は許してやろうと思う方もいるでしょうけど、借金となるとその重さはかなり違います。「隠し事をしていた」という事実よりも、借金は今後の人生に大きな影響を及ぼし、「即離婚」という事態になりやすいものです。
生理的に受け付けなくなった時
理由は人によってまちまちですが、「家にいるのが耐えられない」「一緒に寝るのが嫌になった」「会話をしたくない」「つまらない話に付き合いたくない」など、妻から夫へ、また夫から妻への感情の変化が起き、同じ屋根の下にいるのも無理という状態になるケースがあります。嫌いとか許せないというようなレベルの話ではなく、存在が嫌になったとき、離婚を決意します。
些細な事で喧嘩する事が多くなった時
たとえば、何か頼みごとをしていたのにやってくれていなかった場合。「なんでやってないのか」と聞くと、「忙しかった」という返事にどうしようもない怒りがこみ上げてきて口論になったり。今まで意識しなければ気づかなかった事でも、ちょっとした事がきっかけで全てが気に入らなくなったりする事があります。これが積み重なり、「許せない」を越えるとき、離婚を決意するようになります。
どちらか一方の経済的負担が多くなった時
共働きの家庭も増えており、経済的な部分はお互い協力していこうという場合も多いですが、夫婦のどちらかに経済的に負担がかかる事が多くなると、結婚生活の崩壊につながる事があります。
例えば、極端に収入が低いのに生活費が折半であったりするなど。生活を維持するには経済面の安定は必須項目ですから、そこに不安があれば、離婚を考えるきっかけになります。
不倫や浮気をされた時
不倫などをされて傷つかない人はいません。相手を好きであればなおさらですね。精神的に裏切られたと感じて信頼は2度とできない可能性もありますし、生理的嫌悪感を感じる場合もあるでしょう。「遊びだった」と言われた日には、張り倒したくなる気持ちになるかもしれません。
裏切られた側は、その瞬間に離婚を決意するといった事は大いに考えられます。浮気に罪悪感を感じない人には共通の特徴がありますので結婚相手がもしその特徴を持っている場合は注意した方がいいでしょう。
協力し合う関係が築けなくなった時
精神面で、どの程度お互いを支えあっているのかは、夫婦生活においては案外重要なポイントです。男性の多くは、仕事から帰って来たときに妻の話し相手をする事に苦痛を感じる場合も多いようですが、一方で妻は話し相手が帰ってきたとまくしたてるケースが多いでしょう。
ここの感情の差を埋められずにストレスがたまる場合は要注意ですし、ほかにも家庭における色々な悩み、育児などついて、夫婦のどちらかが悩んでいるような場合にフォローができないと、離婚を決意する瞬間は訪れます。
相手が離婚したい理由が分からない場合
多くの場合、お互いに離婚したい理由ははっきりしている場合が大半ですし、はっきりしていなくてもなんとなくわかる場合が多いものです。しかし、まれにどうして離婚を切り出したのか全く分からない場合があります。
セックスレスは隠れた離婚理由
セックスレス「性的不調和」で離婚する夫婦は、離婚理由のランキングには表立って登場することはありませんでしたが、家庭裁判所に持ち込まれる調停離婚で厳密にみれば、第2位あたりにランクインする離婚理由です。
セックスレスの定義
一般的には、夫婦間において性交が無い状態が一ヶ月以上継続した場合、または性交渉が不可能な状態のことをセックスレスと呼んでいます。また、それに近い男女のスキンシップが無い状態もセックスレスと定義されています。
なぜセックレスが表立って登場しないのか?
なぜセックスレスが上位の離婚理由として上がってこないか。その理由は「セックスレスのせいで離婚した」というのが世間的に恥ずかしいことであるという考えと、性についての話題を公表することに抵抗があるからです。一番都合の良い理由の「性格の不一致」を持ち出すことで、「合わなかった」という意味に幾重もの意味合いを持たせることができるという点もで、「性格の不一致」は使い勝手の良い離婚理由と言えます。つまり、「性格の不一致」は「性の不一致」でもある訳です。
セックスレスの原因
セックスレスの原因としては・・・
- ・そもそも面倒くさい
- ・毎日疲れていて相手ができない
- ・子供を産んでからしなくなった
- ・男女の関係が父親と母親になってしまった
- ・パートナーが外で浮気している
- ・風俗通いで満足している
- ・セックスの相性が合わない
- ・体のコンプレックスを悪く言われた
- ・子供が欲しい為だけにしかしないから
- ・性的異常者 など
夫婦におけるセックスというコミュニケーションをないがしろにすると、配偶者に対しての愛情が薄れてしまったり、今後の夫婦生活を送っていく自信が無くなってしまったりします。セックスごときでと思うかもしれませんが、人間の3大欲求の一つはバカにできないということですね。
探偵や浮気調査会社に相談してみる
何もないのに離婚をしたいと言い出すわけがありません。夫婦生活に嫌気がさしたのかもしれませんが、それにしても文句や怒りなど、何かしらのアクションがあると思うのが普通です。
それがない場合、一番最初に疑うべきはやはり「浮気」でしょう。もしかしたら浮気ではないかもしれませんが、浮気の事実があるかないか、それを判断するだけでも意味がありますし、何よりもそのもやもやした気持ちを払拭するためには有効な手段かと思います。浮気でないならないで、一安心できますからね。浮気調査をする場合は事前に浮気調査の相場料金や費用を抑えるためのコツについても調べておくといいかもしれません。
離婚問題に詳しい弁護士に相談する
離婚の兆候がなかったのに、いきなり「離婚したい」と言われた場合など、離婚問題に長年携わる弁護士なら様々な過去の「サンプル事例」を持っています。あなたやあなたの周りの人間では全く検討のつかない場合でも、弁護士なら心あたりや似た事例を紹介してくれる可能性が高いでしょう。
弁護士というとハードルが高いイメージがありますが、初回の来所相談なら無料の事務所も多いので、一度相談をしてみることをおすすめします。
離婚をする前に知っておきたい5つのこと
最後に、離婚を決意した人が離婚をする前に知っておくべきことをご紹介します。離婚したいからといって即実行に移すとあとあと後悔することありますので、参考にしていただければ幸いです。
1:離婚の手順について
離婚には「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つの方法があり、それぞれ手順などが異なりますし、離婚届を出す際にも証人などのことで注意すべきことがありますので、確認しておきましょう。
協議離婚
離婚全体の90%を占めるのが協議離婚です。夫婦が同意した上で離婚届を提出して離婚が成立するため、時間や費用の節約ができる最も簡単な離婚方法です。協議離婚以外の方法を取る場合もまずは協議離婚の形で離婚ができないかどうか話し合わなければなりません。
調停離婚
離婚の約9%を占める方法です。協議離婚で一方が離婚に同意しなかった場合に用いられる方法で、夫婦間の話し合いでは埒が明かない場合に、調停委員が仲介役として両者の話し合いを調整します。調停委員が中立な立場から話を進めることで、スムーズに夫婦お互いの合意が取れるようにします。離婚調停の期間はだいたい半年ほどで、短いもので1ヶ月、長いもので1年以上になります。
裁判離婚
離婚調停でまとまらなかった場合に行われる方法。それまでの経緯や客観的な証拠により離婚の条件が決められます。この裁判では家庭裁判所が夫婦に判決を言い渡すため、夫婦はその結果を待つしかありません。また裁判離婚では弁護士に対する報酬など費用がかかることが一般的です。
2:離婚時の慰謝料について
慰謝料とは、相手から受けた精神的苦痛に対する損害賠償請求のことを言います。離婚理由にあがったような「浮気・不倫」「悪意の遺棄」「DV・モラハラ」など、離婚にいたる理由によってその慰謝額は変動することがあります。
慰謝料がどういった場合に増額されるのか、また慰謝料請求の方法などを知っておくことで、精神的な被害を受けた者のとるべき手段を知っておくことは重要なことです。
3:子供の親権や養育費について
もし未成年の子供がいた場合、離婚をする際は必ず親権をどちら持つかを決めておく必要があります。離婚届には子供の親権をどちらが持つかを記入する項目もありますし、まだ幼い子供をどちらが育てていくかは子供将来に関わる大事なことだからです。
この時よく起こるのが養育費の不払いや面会交流会などの問題で、詳細な取り決めをしておかないとのちのち厄介な揉め事に発展する可能性が大です。
4:弁護士に相談する場合の費用
弁護士といった専門家への依頼には費用が気になる方も多いと思いますが、離婚問題を弁護士に依頼したときの費用は、全国1030の弁護士事務所平均を出すと、60.7万円となっています。(離婚調停の依頼時)
高いと思うか安いと思うかは個人のお財布事情によりますが、お金を出す以上は弁護士費用を抑えたいですし、頼むなら離婚問題を得意とする弁護士を選ぶべきだとおもいますので、弁護士を選ぶポイントなどをご紹介します。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
離婚を積極的にしたいという方は稀かとおもいますが、しなくてはいけない状況になるのが離婚です。できれば離婚はしたくないかと思いますが、そうなってしまった場合、後悔のない離婚の準備をしていただければと思います。